＜その3＞
| ――すばらしい。なんとすばらしい輝きだ。まるでこの世のものとは思えん。いかなる愛、いかなる名誉、いかなる徳と言えども、この輝きに勝るものはない。 ＜ピサロ＞ |
| （第8話『はじめての新大陸』より） |
| メンドーサの回想 「黄金」という名の魔物にとりつかれた人間……それがピサロだろう。その輝きは人を惑わし、見るものを虜にする。一度、「黄金」にとりつかれたら最後、もう逃げられねえ。俺もそのくちだが、奴に比べればまだ「ましなほう」だと思ってるぜ。 |
| ――俺はたとえ死んでも、総督の言いなりにはならない。インカの誇りを守るだけで十分だ。 ＜トハカ＞ |
| （第9話『ラ･ムー号の最後』より） |
| メンドーサの回想 トハカ。見た目は普通の若者だが、鞭で打たれても、銃で撃たれても、決してピサロたちには屈しない、誇り高き男だった。俺はそのとき感じたのさ、征服されても、心の中では決して屈しない「インカ人」の強さをな。 |
| ――私はインカの娘よ。インカ人の血は一滴でも流したくないの。 ＜シア＞ |
| （第9話『ラ・ムー号の最後』より） |
| メンドーサの回想 ラ･ムー号を乗っ取ったゴメスは、「シアを渡せ」と大砲で迫った。俺たちはとまどった。だがシアは、自分のために村の奴らが皆殺しになるのを恐れて、自ら虜になった。まだほんの子供の、あんな小さな身体のどこにそんな勇気があるのか不思議だった。「インカ人」というのはみんなそんな感じがするな。それは、シアを見ていてよくわかったことだぜ。 |
| ――ラ･ムー号は、俺の命なんだ。 ＜タオ＞ |
| （第9話『ラ･ムー号の最後』より） |
| メンドーサの回想 シアを人質にやるとき、俺は一計を案じた。ゴメスたちはシアを捕まえてきっと油断するだろうから、その隙にうまくラ･ムー号の操舵室に逃げ込むようにってな。あの中にいれば何が起こっても平気だとタオが言っていたのを思い出したのさ。あとは俺たちがなんとかするつもりだったが、いきなりラ･ムー号が爆発しちまったのには驚いたぜ。操舵室に閉じこもった二人は、自らの命をかえりみず、タオは「俺の命」とまで言ったラ･ムー号を、シアの説得に応じて自爆させちまったんだ。もうだめかと思ったぜ。エステバンだって泣いていた。あの二人が無事に操舵室から出てきたときは、本当にうれしく思ったのを覚えている。 |
| ――元気だしなよ。きっと帰れると信じてれば、必ずそうなるからさ。 ＜エステバン＞ |
| （第11話『魔境からの使者』より） |
| メンドーサの回想 故郷の村を見失ったシアに、エステバンが言った言葉だ。あいつが空を見ると太陽が現れて、プーナの村が霧の中から現れたという話だ。エステバンは「若者の姿」そのものだった。ときにはしくじることもあるが、失敗を恐れず、夢を信じて突き進んでゆくその先には、いつも「希望」が待っていた。そんなエステバンに、俺たちもシアも惚れたのさ。 ……ところで、なあタオよ。こういうときこそ、「好きな女の子」には優しい言葉のひとつもかけてやるもんだぜ。まあ、俺はおまえのそういうところが好きなんだがな。 |