＜その1＞
| ――どうだエステバン。黄金都市に行ってみる気はないか。 ＜メンドーサ＞ |
| （第1話『なぞの黄金都市』より） |
| メンドーサの回想 俺のこの言葉で、すべての冒険がはじまった。 もしあのとき俺がエステバンに声をかけていなかったら、奴は一生をバルセロナの修道院で過ごしていたかもしれない。 ――エステバン。 奴は、俺が今までの冒険に出会ったなかで一番勇気のある奴だった。 まだ子供だったが、俺はあいつのことを一人前の男だと認めていた。 そうして、俺たちは旅立ったんだ。 黄金都市「エル･ドラード」の待つ希望の地、新大陸へとな。 |
| ――あいつ悪い奴よ。今度あんなことをしたら噛みついてやる。 ＜シア＞ |
| （第2話『魔のマゼラン海峡へ』より） |
| メンドーサの回想 俺はゴメスの奴に頼まれて、スペインの王宮から「シア」というインカの娘を連れ出した。 船が出港するまでの間、逃げ出さないように猿轡をして木箱の中に閉じ込めておいたんだが、おかげでシアにはずいぶんと「悪い奴」に思われていたようだな。 気の強い子に見えたが、エステバンに出会ってからは、すっかりしおらしくなっちまったみたいだぜ。 |
| ――俺もそんな気がするな。俺におまえを渡した男は、どんな嵐が来てもどんな大波が来ても絶対に負けない、そんな感じのする奴だった。今でも覚えている。おまえを俺に渡して、それからしっかりと俺のここのところを握ったんだ。 ＜メンドーサ＞ |
| （第3話『大竜巻の恐怖』より） |
| メンドーサの回想 エステバンは父親のことで思い悩んでいた。 もう会えないんじゃないかってな。 それで俺はあいつに話してやったのさ。赤子だったエステバンを俺に託した勇敢な父親のことを。 今でも生きている、とな。 それだからこそ、あいつは希望を持つことができたんだ。 |
| ――エステバン。やはりおまえは太陽の子だな。おまえが外に出てきたら、太陽も出てきたよ。 ＜メンドーサ＞ |
| （第3話『大竜巻の恐怖』より） |
| メンドーサの回想 四日も眠らずに、俺はエスペランサ号の舵をとり続けた。 魔のマゼラン海峡を乗り切り、一息ついたときだったな。あいつが甲板をのぼってきたのは。 あのとき太陽の中から現れたあいつは、本当に「太陽の子」だと思ったよ。 |
| ――信じるわ。太陽の子エステバンがそばにいてくれるんですもの。 ＜シア＞ |
| （第3話『大竜巻の恐怖』より） |
| メンドーサの回想 水没する牢屋の中で、シアがエステバンに言った言葉だ。 エスペランサ号は沈没寸前だった。 俺はペドロとサンチョを入り口に残して、無我夢中で二人を牢屋から救い出した。 俺にそうさせたのは、黄金だけじゃない、なにか別の想いが俺の中にあったからだ。 「信じる」……か。 こんな言葉を人に言わせるエステバンは、やはりただ者じゃあないぜ。 |